人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Moominvalley

moomin0321.exblog.jp

三人の旅人たち

三人の旅人たち_c0218426_138784.jpg

 むかし、とほうもなく大きなさばくのまんなかに、ちっぽけな駅がひとつありました。その駅の両側は見わたすかぎりの砂でした・・・

 その駅の名まえは「さばく」といいました。そこには三人の男がすんでいました。信号手のスミスさん、荷物がかりのジョーンズさん、きっぷ切りのブラウンさんです。三人の駅員たちはけっこう幸せでした。でも、しんから幸せだとはいえませんでした。

 それは、まだ誰もこの駅に降り立ったお客さんがいなかったからです。だから、毎日かかさず油を差して磨き上げた信号機もピカピカのはさみも使ったためしはなかったし、お客さんの荷物を運んでチップをもらったこともありませんでした。

 そしてもう一つ、3人は電車が止まる日曜日にお休みを取っていました。ところがせっかくお休みをとってもなんにもすることがありません。行くところはどこにもありません。3人はただ駅のプラットホームの上にすわって、あくびをし、これが月曜ならよかったのに、と思うのでした。

 ある時三人は、一人ずつ長い休暇を取り、汽車に乗って旅をすることにしました。そして残りの二人は張り切って仕事をしました。自分達が始めてのお客さんになった訳です。

一人目は東へ行き、自分の見た大きな街の様子とても自慢げに話しました。

二人目は西へ行き、自分が見た山や海のそのとても美しい風景を大いに自慢しました。

そして三人目のスミスさんは・・・

~『三人の旅人たち』 ジョーン・エイキンス


 僕が大好きな物語。僕が小学生の時に国語で読んだ中で一番心に残っている作品。
 だから僕もいつかこの作品で授業をするんだと、この本を大学生の時に本屋や図書館をあちこち探し回った。(何十件も探して見つからず。なんとアマゾンで発見・・・)

 なんとなく自分が読んだ「高学年」でやろうと思っていたから、それから4年間ずっと家の本棚で温めていた。だけど、思うことがあって2年生の子どもたちと読むことに決めた。

 それは、「目の前の子どもたちと本と出合い、読み合い、語り合うには今しかないとっても奇跡的なことなんだ」と思うようになったからだ。自分が大好きな本だからこそ、素敵な物語だからこそ大好きな子どもたちと読み合いたいそう思った。

 こう思えるようになったのはきっと、拙いながらもこれまで読んだ「スイミー」や「注文の多い料理店」、「お手紙」での子どもたちとの時間が充実していたからだと思う。子どもたちから「読み合う楽しさ」を教えてもらったんだ。(まだまだ自己満足なのかもしれないけど・・・)

 幸い、ページ数も多くなく、漢字にはルビがふってある。主題を突き詰めるような読み方をしなければ充分2年生でも読める。もちろんそんな読み方をするつもりはない。少しずつ読み進めながら、次の場面を想像して考えたり、挿絵を描いたり、サイドストーリーを考えたり、物語の続きを書いたり・・・そうやって読んでいきたいと思っている。

 この冬休みの間、何度も読み返して構想を練っている。ああしたらいいかな・・・こうしたらどうかな・・・子どもたちの表情を思い浮かべながら考えていと、いろんな考えが浮かんできてもやもやしている。1人で書くか、グループにするか・・・指導要領との整合性はどうか・・・そんなことも考えながら苦しくも楽しい時間を過している。

さて、この「三人の旅人たち」は、ジョーン・エイキンスの「しずくの首飾り」という本の1篇。物語はもちろん猪熊葉子さんの訳もとっても素敵で一つ一つの文章がとっても魅力的です。程よく力が抜けてかわいらしい表現が僕は好きです。こんな文章が書けるようになりたいな。また、影絵調の挿絵も物語と合っていてとってもいい。
「三人の旅人たち」に限らず、他の作品もとっても素敵。だから冬休み明けに先生からのお年玉として少しずつ朗読してあげたいなと思っている。。。
三人の旅人たち_c0218426_139420.jpg

by moomin0321 | 2010-01-05 00:53 | ほん